「久しぶりによく見たら、可愛かった多肉植物が別人のように伸びてしまった…」
「茎がヒョロヒョロと長く、葉っぱの間隔がスカスカになっている」
「まるでモヤシみたいで可愛くない。もう捨てるしかないのかな?」
多肉植物を室内で育てていると、誰もが一度は経験するこの現象。これは「徒長(とちょう)」と呼ばれる状態です。
ショックを受けるかもしれませんが、安心してください。徒長した多肉植物は、捨てなくて大丈夫です。
むしろ、この徒長は「多肉植物を増やす絶好のチャンス」でもあります。正しい手順で「仕立て直し(カット)」をしてあげれば、元の可愛い姿に戻るだけでなく、一株からたくさんの赤ちゃん多肉を誕生させることができるのです。
この記事では、初心者の方でも絶対に失敗しない「徒長した多肉植物の復活方法」と、切った後の「増やし方」までをステップバイステップで解説します。
そもそも「徒長(とちょう)」とは?なぜ伸びるの?
作業に入る前に、なぜこうなってしまったのか原因を知っておきましょう。原因を知らないと、仕立て直してもまたすぐに伸びてしまうからです。
徒長の3大原因
- 日照不足(一番の原因):光が足りないため、植物が「光を求めて」上へ上へと茎を伸ばそうとした結果です。
- 水のやりすぎ:水が多すぎると、細胞が膨張し、茎が急激に伸びやすくなります。
- 風通しの悪さ:空気が淀んでいると、植物がひ弱に育ちます。
つまり、あなたの多肉植物は「もっと光が欲しいよ!」とSOSを出して背伸びをしていたのです。この健気なSOSに応えるためにも、綺麗に手術(仕立て直し)をしてあげましょう。
【実践】徒長した多肉を復活させる「仕立て直し(胴切り)」の手順
伸びてしまった茎をカットして、作り直す作業を園芸用語で「仕立て直し」や「胴切り(どうぎり)」と呼びます。
まるで手術のようですが、多肉植物は生命力が強いので、以下の手順で行えば初心者でも簡単です。
ベストな時期は「春」か「秋」
多肉植物(特にエケベリアやセダムなど)が元気に育つ「春(3月〜5月)」か「秋(9月〜11月)」に行うのが成功の秘訣です。
※真夏や真冬は植物が弱っているため、カットするとそのまま枯れるリスクがあります。どうしても冬に行う場合は、暖かい室内で管理してください。
用意するもの
- ハサミまたはカッター:切れ味が良く、清潔なもの。消毒用アルコールで拭いておくと安心です。
- ピンセット:葉を取る時に使います。
- 新しい土:水はけの良い「多肉植物用の土」を用意しましょう。
- 新聞紙やトレイ:切った多肉を乾かす場所として使います。
ステップ1:切る位置を決める
ここが一番悩みどころですが、思い切りが大切です。
先端の「ロゼット(葉が花のように開いている部分)」が綺麗な形をしているなら、その少し下で切ります。
【重要ポイント】
根元の方に残る茎(切り株)にも、葉っぱを2〜3枚以上残して切るのがコツです。葉が残っている方が光合成ができるため、切り株から新しい赤ちゃん(子株)が出やすくなります。
ステップ2:ハサミを入れる(カット!)
決めた位置にハサミを入れ、スパッと切断します。
もし、切りたい位置に葉っぱが密着していてハサミが入らない場合は、先にその周囲の葉を優しくもぎ取って、茎(ハサミを入れるスペース)を確保してから切ります。
ステップ3:下葉を整理する
カットした上部(頭の部分)の、切り口付近にある葉っぱを取り除きます。
土に挿すための「持ち手(茎)」を1cm〜2cmほど作るためです。ここで取った葉っぱも「葉挿し」に使えるので捨てないでください。
ステップ4:切り口を乾燥させる【最重要】
ここですぐに土に植えてはいけません!
切り口が湿ったまま土に植えると、そこから雑菌が入って腐ってしまいます。
風通しの良い明るい日陰に、カットした多肉を転がしておき、切り口がカリカリになるまで乾燥させます。
- 乾燥期間の目安:3日〜1週間程度
- この間、水も土も必要ありません。多肉は体に水を溜め込んでいるので枯れません。
ステップ5:新しい土に植える
切り口がしっかり乾いたら、乾いた新しい土の上に置くように植え付けます(挿し木)。
この時も、すぐに水はやりません。根っこが出ていないのに水をやっても吸えないからです。
1週間〜10日ほど経ってから、ちょろっと水をやり始めます。根付くまでは「明るい日陰」で管理しましょう。
捨てないで!切った後の「茎」と「葉」は宝の山
徒長した多肉をカットすると、3つのパーツに分かれます。これらは全て成長します。
1. 頭の部分(カットした上部)
上記の手順で植えれば、背丈の低い、形の整った「新しいメインの株」になります。
2. 根元の部分(葉を残した切り株)
絶対に鉢ごと捨てないでください!
そのまま水やりを続けて管理していると、カットした断面や残した葉の付け根から、小さな赤ちゃん多肉(子株)がポコポコとたくさん出てきます。
群生(ぐんせい)した豪華な姿を楽しめるようになります。
3. もぎ取った葉っぱ(葉挿し)
途中で取り除いた葉っぱは、乾いた土の上にパラパラと撒いておきましょう(葉挿し)。
成功すれば、葉の付け根からピンク色の根と小さな芽が出てきます。時間はかかりますが、大量に増やすことができます。
もう二度と徒長させないための3つの対策
可愛く復活させたら、今度はその姿をキープしたいですよね。徒長を防ぐポイントは以下の3つです。
1. 日光を十分に当てる(ガラス越しに注意)
多肉植物は日光が大好きです。しかし、最近の窓ガラス(UVカットガラスやペアガラス)は紫外線を遮断しすぎるため、窓辺に置いていても光量不足になることがあります。
可能であれば春・秋は屋外に出すか、室内なら植物育成ライトを活用するのも一つの手です。
2. 水やりを厳しくする
「土が乾いたらあげる」ではなく、「土が乾いて、さらに葉にシワが寄ってからあげる」くらいスパルタに育てると、引き締まった良い株になります。
特に室内管理の場合、土がなかなか乾かないため、水やりの頻度は「忘れた頃にあげる」くらいで丁度よい場合が多いです。
3. 風通しを良くする
風通しが良いと土が早く乾き、植物の蒸散も促されます。サーキュレーターなどで空気を循環させると、徒長防止に非常に効果的です。
よくある質問(Q&A)
Q. 徒長したまま放置するとどうなりますか?
A. 株が弱り、最悪の場合は枯れてしまいます。
茎が細く長く伸びると、自分の重さを支えきれずに折れてしまったり、抵抗力が落ちて病気や害虫の被害に遭いやすくなったりします。早めの仕立て直しをおすすめします。
Q. 乾燥させている間に葉っぱがシワシワになりました。大丈夫?
A. 問題ありません。
葉に蓄えた水分を使って生きている証拠です。土に植えて発根し、水を吸えるようになればパンと張った状態に戻ります。
Q. 茎が木のように茶色くなっていますが、これも徒長ですか?
A. それは「木質化(もくしつか)」かもしれません。
年月が経って茎が茶色く硬くなるのは、植物が成長した証(木質化)であり、徒長とは違います。味わい深い姿としてそのまま楽しむのも良いですし、気になるなら同様にカットして更新することも可能です。
まとめ:徒長は失敗じゃない!増やす楽しみを見つけよう
ヒョロヒョロに伸びた多肉植物を見ると、「育て方が悪かったのかな」と落ち込んでしまうかもしれません。しかし、それは植物が生きようとした証であり、「もっと増やせるよ!」というサインでもあります。
今回のポイントのおさらい:
- 徒長した多肉は「仕立て直し(カット)」で復活できる。
- ベストシーズンは春と秋。
- 切り口は必ず乾燥させてから植える。
- 切った下の株や葉っぱからも赤ちゃんが生まれる。
勇気を出してハサミを入れれば、数ヶ月後には「親株」+「たくさんの子株」に囲まれた、より賑やかな多肉ライフが待っています。ぜひ、今週末にでも仕立て直しにチャレンジしてみてくださいね。
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